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​邦楽散歩道

箏の音は好きだけど、触ったことないよ。尺八ってむずかしい?三味線は一種類じゃないの?等など、邦楽は日本の音楽なのに知らない事ばかり。でも、心配しないで。何しろ長い歴史があるのですから、あなたの知っている歴史、風土、文化にたくさんの関わりがあるはずです。少しのきっかけで興味が持てて、皆さんの身近な音楽になればステキなのにと思ってきました。長く箏・三弦をやってきた立場から、少し邦楽にまつわるお話をしてみたいなと思っています。

一緒に散歩を楽しんでください。

音を楽しむと書いて音楽。この「楽」という字がおもしろそうです。

あるレクチャーでお話しをうかがって、なるほどと頷きました。「樂」(楽の旧字です)という字は2本の糸と白と木に分けられます。白は今では色を表しますが、元々は親指の爪が長く伸びていることを表す象形文字だとの説があるそうです。つまり、木の上に糸を張り親指の爪ではじく、という意味になりますね。これは琴です!糸をはじいて音を出し、聴いたり聴かせたり、あるいは祭祀に用いたり。とにかくそのおとで音で人びとは楽しんだのですね。

なるほど弦楽器の始まりはこういう事かと、そして琴を弾くのは楽しいのだと。

「樂」という字から、何千年も前の人々の様子が想像できるなんて素敵なことですね。そして、何だか有難い字に見えてきました。

たくさん、たくさん箏三味線の音を楽しみたいものです。

富山県上市町江上遺跡から弥生時代後期の琴柱が出土していたと知ってたいへん驚きました。邪馬台国の卑弥呼の時代です。その当時、越の国の各地で琴を用いる祭りの存在があったのですね。今私たちが親しんでいる箏は奈良時代に仏教と共に中国から伝来しましたが、もちろん、それ以前の古代にも弦楽器はあって、卑弥呼らは神霊を呼ぶ祭儀に弦楽器(琴)などを用いたとされます。その頃の琴は歌舞宴会の伴奏楽器ではなく、祭祀に使う支配者のための、たいへん重要な呪倶だったようです。 何気なく箏を奏でている私たち。音楽が生活の中でどんなに大切な役割を果たしているのか、特に意識することもない程です。でも少し、古代に思いを馳せてみましょう。人が音に何かを感じることから始まり、やがて楽器を作り、それがカミと交信をはじめる為の音楽の誕生になったということ。卑弥呼たちが音楽を祭りごとの中心に置き、楽しんだと思われること。そんな歴史の一場面が次々と見えて来るようです。そして改めて、音楽の魅力に不思議を感じさせてくれます。  世は移り変わっても、全ての人が音楽の魅力に身を委ねています。古代から延々と続く琴の音。卑弥呼がほんの少し身近になった気がしませんか?

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